奨学金の申し込みから返済まで、知っておくべきポイントは?
奨学金制度の基礎知識
「進学したいけれど経済的な余裕がない」という時、多くの学生が利用しているのが奨学金制度で、全大学生の50%が奨学金を利用しています。
奨学金でとくに利用者の多いのが、日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金制度で、「給付型」と「貸与型」とがあります。
奨学金の「給付型」と「貸与型」では何が違うのか、その違いを紹介します。
奨学金制度とは
奨学金制度は、「向学心がありながら、経済的な理由で学校に通うのがむずかしい学生を対象に、教育の機会均等を図り、豊かな人材の育成をする」ものです。
奨学金制度で、最も利用されているのは日本学生支援機構の奨学金制度ですが、自治体の奨学金制度やあしなが育英会などのような公的機関、民間で利用できる奨学金制度もたくさんあります。
奨学金は、借りた学生が働きだしてから返済し、続いて利用したい学生にそのお金が活用されていく、という流れで運営されています。奨学金制度で支給を受けるには条件が借り、審査を受ける必要が有ります。
審査でチェックされるのは金銭面での融資的基準ではなく、「経済的に困窮しているが、向学心に富んでいる」という事を基準に審査が行われます。
保証人は、親や親せきが連帯保証人となる場合がほとんどですが、返済するのはあくまで本人になります。ですから、親が金融事故を起こしたことがあっても、其の事には関係なく申請する事が出来ますし、その事が原因で審査に通らないという事はありません。
申込資格
申込方法は
- 予約採用
- 在学採用
があります。
予約採用
予約採用に申込む場合、第一種第2種にかかわらず、以下のいずれかを満たす必要があります。
- 該当年の3月末に高校を卒業予定である事
- 高校卒業後2年以内で、大学などに入学していない事
- 高卒認定試験の合格者で、まだ大学などへ入学していない事
給付型を希望する場合は、下記のうちいずれかを満たす必要があります。
- 住民税非課税(市町村民税割額が0円)の世帯
- 生活保護を受けている世帯
- 18歳のときに児童養護施設、児童自立支援施設、児童心理治療施設、自立援助ホームに入所している
- 18歳のときに里親やファミリーホームのもとで暮らしている
在学採用
在学採用で奨学金に申込む場合は、第一種第二種にかかわらず、大学に正科生として通っていることが条件になります。
「貸与型」と「給付型」
奨学金には「貸与型」と「給付型」が有り、条件が合えば「給付」という形で返済不要になります。
「貸与型」には第一種奨学金と第二種奨学金の両方またはどちらかの一方で利用できます。
第一種奨学金(無利息) | 第二種奨学金(利息あり) | ||
契約者 | 学生本人 | ||
貸与金額(大学の場合) | 月3万円~6万4,000円 | 月3万円~12万円(私立大学の場合増額可能) | |
利子 | 無利息 | 有利息 | |
保証料 | なし(連帯保証人がいない場合は必要) | ||
連帯保証人 | 必要(保証料を支払えば不要) | ||
学力・成績に関する申込基準 | あり | ||
収入に関する申込基準 | あり | ||
予約採用/在学採用 | 予約採用または在学採用両方あり | ||
主な申込方法 | 通っている学校を通じて申込む | ||
申込時期 | 予約採用の場合 | 高校3年生の4月~5月頃(学校により異なる) | ・高校3年生の4月~5月頃
・高校3年生の10月~11月頃 |
在学採用の場合 | 大学入学後の春頃(必要な場合は毎年申請が必要) | ||
貸与開始時期 | 予約採用の場合 | 大学入学後4月~6月 | |
在学採用の場合 | 5月~7月 | 5月~7月 | |
返済開始時期 | 貸与終了月の翌月から数えて7ヶ月目 | ||
他の奨学金や教育ローンとの併用 | 可能 |
「給付型」は平成30年から本格的に導入されますが「貸与型」と比べて給付される金額は少なくなりますが、返済義務がないのがメリットです。
給付型奨学金(平成30年度進学者) | |
給付金額 | 自宅通学2万円~3万円、自宅外通学3万円~4万円 |
学力・成績に関する申込基準 | あり |
収入に関する申込基準 | あり |
予約採用/在学採用 | 予約採用のみ |
主な申込方法 | 通っている学校を通じて申込む |
申込可能な時期 | 高校3年生の4月~5月頃(学校により異なる) |
項給付開始時期 | 大学入学後の4月頃 |
他の奨学金や教育ローンとの併用 | 可能 |
※国立の学校で、授業料が全額免除となる場合、自宅通学の場合は0円、自宅外通学の場合は2万円になります。
申請コースは7種類
奨学金は
- 第一種(無利子)
- 第二種(有利子)
- 両方を併用
した場合の3種類ですが、申請するコースは7種類から選ぶ事になるので、 それぞれのコースの意味を十分に理解して、自分に最適なコースを選択する必要があります。
①一種奨学金のみを希望する。
このコースは、第一種奨学金が不採用なら、奨学金は利用しないという場合です。
ただし、第一種は選抜型になるため、申請基準を満たしていても、必ず採用されるとは限らないので、奨学金が絶対に必要な時はこのコースの選択はおすすめできません。
②第一種奨学金を希望するが、不採用の場合は第二種奨学金を希望する。
第一種が不採用でも、第二種で採用される可能性は高いので、成績条件がクリアしていて、出来る事なら第一種を受けたいという人におすすめのコースです。
③2種奨学金のみを希望する。
第一種の成績基準を満たしていない人は、こちらを選択してください。
第二種は、家庭の収入基準だけで判断されるので、審査に通りやすいというメリットがあります。
④第一種と第二種の併用を希望する。
「第一種と第二種の併用が不可の場合は、奨学金そのものを辞退すると」いう意味で、もっとも難易度の高いコースです。
このコースを申込む場合は、保険として第二種を選択する⑥か⑦のコースを検討した方がよいでしょう。
⑤併用を希望しますが、不採用の場合は第一種のみを希望します
併用が不可でも第一種のみの採用が決まることがあります。
第一種は学校の種別などによって月々の金額が決められているので、必要な学費を第一種だけで賄えるのかを詳細に計算したうえで選択する必要があります。
⑥併用を希望するが、併用及び第一種が不採用の場合は第二種を希望する
併用が不採用になったとしても、奨学金が絶対必要である人におすすめですが、第二種の希望月額も余裕をもった金額を選択しておく事がポイントです。
⑦併用を希望するが、併用が不採用の場合は第二種を希望する
この場合も⑥と同じく、第二種の希望月額も余裕をもった金額を選択しておく事がポイントです。
返済方法と返済期間
卒業すると返済が始まりますが、返済方法は毎月27日に登録した口座から引き落しされます。
返済が始まるのは「貸与が終了した月の翌月から数えて7ヶ月目」から始まりますが、返済方法は「毎月均等払い」と「ボーナス併用」から選びます。
返済期間と返済回数
奨学金の返済方式は、
- 所得連動返還方式
- 定額返還方式
になり、返済期間、返済回数は返済方式によって変わってきます。
所得連動返還方式
卒業後、前年の年収に応じて、その年の月々の返済額が決まる方式で、年収に応じて月々の返済額が変わるので、返済期間は確定しません。
この方式が選択できるのは、第一種奨学金を利用した場合のみで、保証は「日本国際教育支援協会」から受ける必要があります。
ちなみに、この返済方式は「ボーナス併用」は選択できません。
低額変換方式
毎月一定額を返済する方式で、返済額は、貸与総額とボーナス払いの有無によって自動的に決まります。この方式も返済期間や毎月の返済額はケースごとに異なるので、変換期間は確定できません。
ただし、日本学生支援機構には「奨学金貸与・返還シミュレーション」が用意されているので、これを活用すればある程度の事はわかります。
返済が出来なくなったら?
奨学金を利用して大学を出たものの、何らかの理由で返済が続けられなくなる事もあります。
日本学生支援機構の奨学金制度を利用した場合、返済できなくなった時の対処法として、「減額返還制度」と「返還期限猶予制度」があるのでそれらへ願い出る事で対処できます。
「減額返還制度」は、災害や傷病、その他経済的な理由で奨学金の返済が困難になった方で、当初約束した割賦金を減額すれば返還可能である方が対象で、最長15年まで伸ばす事が出来ます。
「返還期限猶予制度」は災害や傷病、経済的に困難、失業などで返還が困難な状況になった場合は、返還期限の猶予が可能で最大10年まで遅らせる事が出来ます。いずれにしても、返済を続けることが厳しいと思った時は、まず日本学生支援機構に連絡を入れて相談する必要があります。
まとめ
教育関係のローンの中でも、日本学生支援機構の奨学金が最もポピュラーで、しかも最も低い金利で借りる事が出来るので、教育ローンを検討するより、まずは日本学生支援機構の奨学金を検討してみましょう。
また、厚生労働省には、母子父子家庭や経済的に厳しい家庭対象に進学費用を貸し付ける「母子寡婦福祉資金貸付金」があります。
こちらの貸付制度は母子父子家庭で、経済的に大学進学が厳しいという方を対象にした制度で、最長20年無利息で借りることが出来ます。母子父子家庭で経済的に苦しいという方は、まずこちらを検討してみる事をおすすめします。